ビデオのエンコード
二ヶ国語音声の場合

キャプチャーしたビデオが2ヶ国語音声だった場合のエンコード方法を説明します。 アニメ編と共通する部分が多いので、重複する部分は省略して解説しています。
解説で使用しているビデオは、音声の左チャンネルが日本語、右チャンネルが英語となっています。

エンコードにはPEGASYS社の「TMPGEnc Video Mastering Works 5」というソフトウェアを使用します(以降、TVMW5と表記します)。 音声の編集には「Sound Engine (Free)」を使用します。

あらかじめ、作成する動画の仕様を決めておきます。
 BDMVフォーマット
 動画のコンテナは、MPEG2-TS
 映像は、MPEG-4 AVC/H.264、プロファイルはMain@Lv3
 固定ビットレート 2400kbps、インターレース保持
 音声は、Dolby Digital (AC3) 192kbps

今回は、残念ながらアニメ編と違って TVMW5 で一発変換とはいきません。手間がかかってしまいます。


まず、作成する動画の構成について説明します。

アニメ編で作成した動画は図のような構造になっています。コンテナに、映像ストリームが1つ、音声ストリームが1つ入っています。


今回作る動画は、2ヶ国語音声になるため、コンテナに映像ストリームが1つ、音声ストリームが2つ入ることになります。


次に、作成手順について説明します。

ソースの映像・音声をTVMW5で処理するのですが、映像と音声を分けて出力します。 映像はアニメ編のようにフィルターをかけてエンコードします。音声はフィルターをかけず、エンコードもせずにWAVファイルとして出力します。


音声を波形編集ソフトで、左チャンネルの音声と右チャンネルの音声を分離して、2つのWAVファイルを作ります。


2つの音声ファイルをTVMW5でAC-3にエンコードします。この時にフィルターで音量調整をします。


TVMW5にあるツールを使用して、上で作成したビデオストリームと2つの音声ストリームを MPEG2-TSコンテナに入れて動画が完成します。


具体的な作業手順を説明します。

TMPGEnc Video Mastering Works 5を起動して、新規プロジェクトボタンを押します。


キャプチャーした動画(拡張子が m2v)を選択して開きます。


カット編集の画面で、エンコードしたい映像の範囲を指定します。必要であれば編集も行ってください。


フィルターの設定をしていきます。 この画面は「インターレース解除」の設定ですが、デフォルトのままでよいです。




「映像ノイズ除去」のパラメーターを設定します。以下のように設定しています。
  [ ]ノイズ除去を有効にする (無効にします)
  [v]ノイズ除去(時間軸)を有効にする (有効にします)
    時間方向の強さ :50
    ノイズ検索範囲 :やや広い(普通)
実写のソースの場合、静止画のノイズ除去を使うと思いっきり細部が潰れてしまうので使用していません。 また、このソース映像はかなり古いもので(VHS 3倍録画)ノイズが酷かったので「時間軸方向の強さ」の設定値を50にしましたが、 比較的綺麗な映像であれば、20〜30程度で十分です。これでも、髪の毛の線がちょっと消えかかってしまうくらいです。

ノイズ除去をすると必ず細部は潰れます。ノイズが気にならない場合は、ノイズ除去をしなくてもいいと思います。



輪郭強調フィルターの設定をします。 図では、以下のように設定しています。
  [v]輪郭強調を有効にする
    輪郭強調の強さ :64
    輪郭強調の範囲 :やや広い

ノイズ除去をすると、映像が少しボヤけるため輪郭強調を使っています。 そのため、ノイズ除去をしていない場合は輪郭強調は必ずしも使う必要はありません。



出力設定をします。 アニメ編で使用した設定とほぼ同じです。 違いは、「出力ストリームの種類」を「ES(映像のみ)」にすることです。 この時、「出力するストリームの種類が「エレメンタリーストリーム」になっていることを確認してください。
設定が終わったら「エンコード」ボタンを押します。


出力ファイル名を、適当に変更しましょう。ここでは映像部分のみが出力されるので、ファイル名に「VideoPart」と入力しておきました。 拡張子は「264」になっていますが、このままで問題ありません。
「バッチ登録」ボタンを押してください。


次に音声出力の設定をします。「出力設定」ボタンをおして、出力設定画面に戻ります。
先ほど設定した映像の設定を削除してください。次に「追加」ボタンを押して出力フォーマット選択画面を表示させます。 ここで、「WAVEファイル出力」を選択します。


入力ソースの音声と同じ設定内容になっているか確認してください。 多くの場合は、以下のようになっていると思います。
  48000Hz, 16bit, 2ch (ステレオ)


エンコード画面に移ります。ファイル名を設定して「バッチ登録」ボタンを押します。 図では、音声ファイルだと分かるようにファイル名に「AudioPart PCM 2ch」と入力しました。


バッチエンコードツールで「バッチ開始」ボタンを押して映像、音声を出力させます。


2つのファイルが作成されました。


次に、音声の編集を行います。編集には「Sound Engine Free」を使用しています。
まず、左チャンネルの日本語音声を取り出してWAVファイルにします。

TVMW5で出力した音声ファイルを「Sound Engine Free」で開きます。


図の黄色い囲いの部分にある「全」の部分をクリックして「右」を選択します。


「編集」メニューにある「すべて選択」を選択します。


右チャンネルが選択された状態です。


「音量」メニューの「ボリューム(音量調整)」を選択します。 「ボリューム(音量調整)」の画面で、音量を最小(-72.0dB)にして「OK」を押します。


右チャンネルの音量がゼロになりました。


図の黄色で囲んだ部分の「チャンネル」を「1」に変更します。


そのまま「OK」を押します。


モノラルの音声データになりました。念のため再生させて日本語か確認しておきましょう。


「ファイル」メニューの「名前を付けて保存」を選択して、音声データを保存します。 分かりやすくするために、ファイル名に「L-ch」「Japanese」などを入れるとよいかもしれません。


右チャンネルの音声も同様にして作成します。 図は、ここまでで作成されたファイルです。


次に、音声ファイルをAC-3にエンコードします。「TMPGEnc Video Mastering Works 5」を起動させてください。

音声ファイル(WAVE)を開きます。ここでは左チャンネル(日本語)を開きました。


編集をする必要はありません。フィルターの設定を行います。
「音声ボリューム調整」の設定をします。
  音量調整の手法 :音量均一化
    均一化方法 :平均
    基準にする音量 :-20 dB
音量調整の詳細は、アニメ編またはTVMW5のヘルプをご覧ください。


エンコードの設定を行います。
「Dolby Digital 音声ファイル出力」を選択してください。


以下のように設定しました。
  ストリームの形式  :Dolby Digital
  サンプリング周波数 :48000 Hz
  チャンネルモード  :モノラル
  ビットレート    :192 kbits/sec


エンコード画面に移ります。ファイル名を設定して「出力開始」または「バッチ登録」してください。 右チャンネル(英語)も同様にしてAC-3にエンコードしてください。


ここまでで作成されたファイルです。


「TMPGEnc Video Mastering Works 5」の「MPEGツール」を使って、作成した映像と音声をMPEG2-TSコンテナに入れます。 このような映像や音声などのストリームを1つのコンテナにまとめる作業を「多重化」といいます。 「MUX」と表現することがあります。

「高度なツール」ボタンを押します。


「MPEGツール」ボタンを押します。


「多重化(高度)」タブを選択してください。
次に、形式のリストボックスから「MPEG-2 Transport (VBR)」を選択してください。


「追加」ボタンで多重化するファイルを一覧に追加してください。 ファイルエクスプローラーからファイルのドラッグ&ドロップでも追加できます。
追加する順番ですが、最初に映像のファイルを追加してください。 次に音声ファイルを追加します。ここでは、日本語音声を追加してから英語音声を追加しています。 こうした場合、PCで動画を再生するとデフォルトで日本語音声が再生されます。 再生ソフトの音声切替え操作をすると、英語音声が再生されます。 英語音声をデフォルトで再生させたい場合は、日本語より先に英語音声を追加してください。 図ではファイル名が見えていませんが、以下のファイルを追加しています
  GankoJiisan#9(VideoPart).264
  GankoJiisan#9(AudioPart PCM Mono L-ch Japanese).ac3
  GankoJiisan#9(AudioPart PCM Mono R-ch English).ac3
出力先の欄に出力ファイル名を入力します。拡張子は「m2t」のままでよいです。 「実行」ボタンを押すと多重化処理が始まります。


多重化処理中です。


多重化処理が終わりました。念のため再生の確認をしてください。
動画ファイルに問題がなければ、「m2t」以外の拡張子の付いたファイルを削除しても構いません。


Media Player Classic で再生している場合は、"Navigate"メニューの "Audio Language" で音声の切り替えができます。
これで2ヶ国語音声の動画の作成作業は終わりです。


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